TOPICS

2024/01/01 09:00

(写真:ルングス人女性の伝統衣装)

マレーシア・ボルネオ島サバ州の最北地域クダットには、ルングス(Rungus)と呼ばれる先住民が多く暮らしています。

ルングス人の伝統衣装には、ビーズでモチーフをあしらった「ピナコル(pinakol)」と呼ばれる装飾品があり、クロスさせて身に着けるのが特徴的です。


(写真:ピナコル)
(写真:ピナコルのモチーフ)

ピナコルのモチーフには、それぞれに名前と意味があります。

写真左上から、

ティニングルン(tiningulung/tiningulun):戦士・花婿
イノンプリン(inompuling):武器
ティヌガラン(tinugarang):生き物・動物
ヴィヌサック(vinusak):野花・敵の娘・花嫁


ピナコルには結婚にまつわる伝承が描かれており、ルングス人のピナコル職人さんがそれを教えてくれました。

男性を表すモチーフ、ティニングルンには、戦士と花婿の二つの意味があります。昔々、花婿は結婚式に行く時は、必ず武器(イノンプリン)を持参しなければいけませんでした。そして、その道中で出会う動物や生き物(ティヌガラン)は、ヤモリやゴキブリであっても出会った生き物は全て殺めなければいけませんでした。それには、厄を払い、結婚後の災いを避ける意味があります。ヴィヌサックのモチーフには、野花と敵の娘、花嫁の意味があります。昔々、結婚式は森の花が咲く時期に行わなければいけませんでした。なぜなら、昔は結婚式の装飾と花嫁の頭と首に付ける装飾品はそれしかなかったからです。


(職人さん提供の写真:昔のビーズ)

現在は、プラスチックやガラス素材のビーズを用いて装飾品を制作していますが、昔は、果実の種や木の実、貝の殻でそれを作っていました。
それらには白色や黒色、赤色、茶色があり、黄色は木で染色していたそうです。

写真左上から、

・sagaと呼ばれる果実の種(赤)とbotutung karaと呼ばれる果実の種(黒)
・talantangと呼ばれる木の実
・海貝(シースネイル)の殻
・sinangkilと呼ばれる果実の種


(職人さん提供の写真:ビーズ装飾品の制作方法)

ルングス人が用いるビーズネックレスの作り方は二つあります。
タテ糸を張り、針にビーズを通して、ヨコ糸に織り込んでいくビーズ織り。
そして、一粒一粒のビーズを指で糸に通してモチーフを作る手法があります。


(写真:ピナコルをアレンジしたネックレス)

現在、ピナコルは、伝統衣装の装飾品としてだけではく、伝統モチーフや幾何学模様をあしらったキーチェーンやイヤリング、またファッション用のネックレスにアレンジされ、お土産品としても販売されています。

当店で扱っているビーズネックレスは、クダットに暮らすベテランのルングス人職人さんが制作しています。

職人さんは、4歳の時にお母さんからビーズ細工を教わり始め、12歳で自分自身で作品を作れるようになり、17歳の頃には伝統モチーフをマスターし、デザイン制作ができるようになりました。そして、2005年にマレーシアの国立博物館で開催された国際クラフトコンペティションで優勝しました。

そのような実績を持つ、ベテランのピナコル職人さんとデザインや配色、サイズを一から話し合いながら、受注制作されたこだわりの作品だけをお取り扱いしています。



※こちらの記事は、マレーシア・ボルネオ島サバ州に暮らすルングス人のピナコル職人さんへのインタビューに基づいてまとめられたものです。
※随時、加筆&修正しています。